笑顔で穏やかな生活を支える認知症の方へのポジティブケア

一覧に戻る

BPSD治療のために外来診療で向精神薬を開始した時のBPSDの状態

上村 直人

作成目的

BPSDに対する薬物治療を開始すべきか否かについては、多くの医師が悩んでいます。そこで我が国において、認知症専門医がどのようなBPSDがどのような頻度、重症度になった時に外来診療で薬物治療を開始しているかを調査し、目安となる指標を提案しました。

概要
我が国でBPSDに対する専門的治療を行っている12施設の外来診療において、BPSDに対して向精神薬治療を開始した時の、BPSDの種類、頻度、重症度を調査し(研究1)、その情報を整理したものです。現在の我が国においては、認知症専門医は、「このようなBPSDがこのような頻度、重症度になったときに薬物治療を開始している」という情報がわかり、非専門医が薬物治療を開始する際の目安にできると思います。また認知症診療にかかわる専門家に対して現在のBPSD治療に関するアンケート調査を実施しました(研究2)。
使用の際の留意点

認知症に対する向精神薬の使用は、ほとんどが適応外使用となるため、ご本人と家族へのインフォームドコンセントを得てから薬物治療を導入するよう心がけてください。またBPSDに対する薬物治療は、BPSDの種類、頻度、重症度だけでは決まらず、ご本人がどのように生活されているか(独居、誰かと同居してご自宅におられる、施設に入所されている)、ご本人の状態(認知症の原因疾患、体の病気の有無やその重症度など)、介護者の状況(体の病気の有無やその重症度、介護に費やせる時間など)も関与しますので、提示しているBPSDの状態が絶対的な基準ではありません。

検証

本資材で示された基準に従って向精神薬を投与した場合、これまで以上に円滑に薬物治療が奏効したか否かについては未検証です。しかし研究2の結果は、研究1の結果を支持するものでした。そのため、研究1の結果は妥当と考えました。

資材をダウンロード

BPSD治療のために外来診療で向精神薬を開始した時のBPSDの状態