田中 志子
病棟において認知症のある患者のケアには多くの困難を伴い、身体拘束にもつながりやすいものです。そこで、認知症のある患者に身体拘束をせずに適切なケアが行えるよう、その指針となるケアのコツをマニュアルとして体系化しました。
このケアマニュアルは大きく3部構成となっており、Tは認知症の患者へのアセスメントや認知症の各タイプ、BPSD、せん妄への対応について、Uは認知症患者への基本的なコミュニケーション方法や看護・介護を行うコツについて、Vは点滴やチューブ等を抜かれてしまうなど身体拘束につながりやすい具体的な治療場面のコツについて述べられております。それぞれのテーマの1ページ目には各テーマに関するフローチャートが載っており、次のページ以降にはそのフローチャートの補足説明や具体例などを載せております。
Tはカルテやアセスメントで得られた情報と照らし合わせながら活用いただくことでケアやかかわりのヒントを得ることができます。UとVのフローチャートはYes/No方式で、各項目の内容が当てはまればYesの緑の矢印の示す項目へ、当てはまらなければNoの赤の矢印の示す項目に進んでいき、黄色の矢印はその項目の内容を実際にやってみたり、様子を見ることで知りたかったケアのやり方にたどり着けるものとなっております。マニュアルは非常にコンパクトにまとまっており、持ち運びもしやすく、ベッドサイドなどの実践でより活用いただける頼もしい1冊となっております。
印刷して使用する場合には、カラーで印刷されることをお勧めします。
このケアマニュアルに沿ってケアを行うことで、病棟に入院している認知症患者のBPSDが一週間以内で有意に軽減されることが示されております(小池京子,尾中航介, 安原千亜希, 内田智久, 田中志子, 山口晴保:身体拘束ゼロでBPSDを軽減させる認知症ケアに関する研究,全日本病院協会雑誌 30(1), 2017.)。
病棟における身体拘束ゼロのためのケアマニュアル ―大誠会スタイル―(外部HP)
※公開元ホームページ:医療法人大誠会内田病院
本ウェブサイトは、日本医療研究開発機構(AMED)認知症研究開発事業の以下の研究の支援を受けて、開発・運営されています。
「認知症者等へのニーズ調査に基づいた『予防からはじまる原因疾患別のBPSD包括的・実践的治療指針』の作成と検証研究」
研究代表者 數井 裕光
「BPSDの解決につなげる各種評価法と、BPSDの包括的予防・治療指針の開発〜笑顔で穏やかな生活を支えるポジティブケア」
研究代表者 山口 晴保
「血液バイオマーカーと神経画像検査によるBPSDの生物学的基盤の解明、および認知症者の層別化に基づいたBPSD ケア・介入手法の開発研究」
研究代表者 數井 裕光