品川 俊一郎
認知症の人のBPSDが強く、在宅での治療が困難な場合、精神科病床への入院も検討されますが、専門性の高い判断が求められます。どのようなBPSDが精神科病院での入院治療の対象となるのかをまとめた資材です。
「BPSDのため、精神科病床への入院が必要」と専門医が判断し、実際に入院加療を行った247例の認知症の連続例について、入院の原因となったBPSDに関する前向き調査を行ないました。その結果、入院治療の選択には様々な要因が複合して関与しているものの、BPSDでは興奮や易刺激性が判断の基準となることがわかりました。統計解析でもこれらのBPSDが入院治療の選択に最も影響を与える因子であり、NPIという評価尺度で「興奮+易刺激性+異常行動の得点」でスクーリニングが可能と考えられました。
BPSD以外にも介護者の続柄や年齢、住居形態、介護保険の有無などさまざまな要因が影響すると思われるので、これらにも配慮が必要です。
実際の入院治療判定の指針のニーズ、および妥当性を検証するために認知症医療を行なっているスタッフへのアンケート調査を行ったところ、(条件付きまで含めると)88%の人が「BPSDで入院が必要となる基準」があれば用いたいと答え、ニーズは高いことが確認できました。またスタッフが入院を検討するBPSDとしても興奮や異常行動の割合が高く、本調査の結果は信頼できると考えられました。
精神科病棟での入院治療が求められる認知症患者の行動・心理症状(医療者向け)
本ウェブサイトは、日本医療研究開発機構(AMED)認知症研究開発事業の以下の研究の支援を受けて、開発・運営されています。
「認知症者等へのニーズ調査に基づいた『予防からはじまる原因疾患別のBPSD包括的・実践的治療指針』の作成と検証研究」
研究代表者 數井 裕光
「BPSDの解決につなげる各種評価法と、BPSDの包括的予防・治療指針の開発〜笑顔で穏やかな生活を支えるポジティブケア」
研究代表者 山口 晴保
「血液バイオマーカーと神経画像検査によるBPSDの生物学的基盤の解明、および認知症者の層別化に基づいたBPSD ケア・介入手法の開発研究」
研究代表者 數井 裕光